第30回 山口100萩往還マラニック大会 完踏
≫ 第30回 山口100萩往還マラニック大会まであと少し
例年、完踏率50%ということが頷ける、累計高度上昇量が約2,500mの山坂の多いハードな大会でした。難所の25kmに及ぶ峠は不規則な凹凸のある石畳みの道が続き、行きは深夜0時からここを越え、ゴール手前で再びこの峠の25㎞を越えるというものでした。
萩往還道は江戸時代前より使われていた道を、関ヶ原の戦いで敗れた毛利輝元(長州藩)が萩城に居を移した後の慶長9年(1604年)に、道幅二間(4m)の重要道路として整備した道で「歴史の道百選」にもなっています。ここを走るこの大会は平成元年に始まり今回の第30回を節目に終了する大会です。
自分にとって無謀と思えるこの挑戦は、昨年6月に初めてサロマ湖100㎞マラソンに出走し完走した後に叶えたい夢へと変わりました。
完踏し今思うことは、一歩を踏み出す勇気は、今やりたいという自分の気持ちを信じることから生まれ、夢に向かい努力している日々こそが充実し何よりも幸せで自分を輝かせているということ。
「できるか、できないか」なんてどうだっていい。「やりたいか、やりたくないか」ただそれだけ。これからの人生も「自分が後悔しない」というシンプルな選択で歩んで行きます。
挑戦する機会を与えてくれた皆様、また同様に日々を努力し毎日を懸命に生きる仲間達に心から感謝します。完踏しました!ありがとうございます!
【記録】
- 140km 21時間41分 68位
◉今回第30回大会の出走者数と完踏率
- 250km 515人/303人 59%
- 140km 436人/249人 57%
出走前に仲間と
スタートから間もなく、予期せぬ雷雨で始まった。山口市から瀬戸内海の防府市に進み、折り返して再び山口市に戻る49.6㎞間がまずは大きな関門。
「ここで時間を稼がなければ、この先は深夜からの長い25㎞の険しい峠に差し掛かる。96㎞ポイントのチェックポイントで時間切れになってしまう。」
想像よりもかなりアップダウンが多く厳しいコースだ。
逸る気持ちとは裏腹に想定外の雷雨と信号が多く信号待ちでのタイムロスとこれによる脚力の消耗。更には道に迷い2㎞の距離オーバーと30分のタイムロス。
スタートは道の混雑を避けるため50人位ずつ5分間隔位でのウェブスタートを採用しているためか前後に人影は見えない。
「峠の道は複雑だ。前方のランナーを意識して走らなければ道に迷ってしまう。自分の走りやすいペースを維持するだけでは目的地に辿り着けない。」
波乱の幕開けとなったが、問題を乗り越え49.6㎞地点福祉センターに到着。
巡航計画は最悪も想定していたため予定よりは30分早い0:00に着いたが、所要時間10分で買い置きしていたおにぎりとジェルを食べすぐに難関の峠越えに挑む。
ここから95.2kmチェックポイントの虎ヵ崎までは水分とジェルの補給する時間以外は休憩を取らない計画だ。いや大体の補給は歩きながら行う。
暗闇の中をヘッドライトとハンドライトを片手に前に進む。ハンドライトは重いので持参するか迷ったが持ってきて正解だ。暗闇の山道を走るには足元と数メートル先を照らさなければ足場が悪いため危険だ。
ハンドライトで足元を照らし、ヘッドライトで行先を照らす。闇の静けさの中であちこちから蛙の鳴き声がする。
走れるところはとにかく走る。斜度が30度を超えると早歩きに切り替えるそんなイメージ。早歩きと言ってもとても速い。勾配がきつく息が切れても歩みを止めることはない。ひたすら前に進む。
走るのと早歩きを繰り返す。石畳の凹凸が足裏の接地を不安定にし、その上石の表面がとても滑る。
それでもそこに不平や苦痛の感情はでてこない。これから見る日本海の景色を楽しみにし、今挑戦できているこの瞬間と関係する皆に感謝しながら進む。
前日は寝付けず朝の4時に目が覚めたため、かれこれ24時間以上寝ていないが眠気は一切無くテンションが高い。脚の疲れは極端には感じられず100㎞までは走れる感じだ。自ら進んで楽しむことは何倍もの力を与えてくれる。
「今を楽しみ感謝すること。これがゴールへの一番の近道だ。」
萩市入り 日本海を望む
浜崎緑地公園を過ぎた辺りから虎ヵ崎つばきの宿までの数キロは細かいアップダウンが続く。
天気が良く日本海が眩しい。綺麗な風景と心地よい風で幸せな気持ちになる。
「あと少しでカレーが食べれる。15分間休憩ができる。」
95.2kmチェックポイント 虎ヵ崎つばきの宿
カレーは大盛にした。ライスだけが異常に多くルーがもっとほしかったがとてもありがたく、とても美味しい。長時間走ると食べられないランナーも多いと聞くのだが自分はいくらでもおいしく食べられる。幸せだ。
「今はないものについて考える時ではない。今あるもので何ができるかを考える時だ。」
食事とトイレを済ましたらすぐに出発だ。20分位は休めただろうか。あまり休みすぎると筋肉が硬直し脚が棒のようになってしまう。とにかく動き続けないと足が止まってしまう。
ここからの最後の45kmが最も険しい難関で、毎年多くのランナーがここで悔し涙を流してきた鬼門。
峠途中でリタイヤとなると定められたポイントまで自力で戻らなければならないためここで止める人が最も多い地点。
「奇跡は起こるものでなく自分で起こすもの。心さえ折れなければ夢は必ず実現する。自分を信じろ。完踏こそがお世話になっている人達への恩返しだ。」
自らに何度も何度も言い聞かす。
スタートから105km地点
峠に差し掛かった。ラスト25㎞。
行きは深夜0時から日が昇る前に峠を越えたため、どんな景色なのか楽しみでもあった。
木漏れ日と優しい風が心を癒してくれる。もう辛さなどは感じない。もうすぐ練習を積み重ねた日々のゴールが待っている。
スタートから115km地点
最後の峠を上り切ると数キロの下りでゴール。
やはり疲れた脚には下りが辛い。石畳は本当にきつい。
それでもやっぱり山が好き。走ることが好きという気持ちは変わらない。
「あと少しでゴール。最後の最後まで力を振り絞り、走り続けてゴールしたい。」
スタートから130km地点
ゴール手前200m位に応援する方々が並び大きな声援とハイタッチで「おかえりなさい」と出迎えてくれる。 とても嬉しい。目頭が熱くなる。
ゴール地点(瑠璃光寺前)
今回の自分の最大のテーマは出場した同じランニングチーム3人の全員ゴールだった。自分自身のゴールの喜びというよりもその目標を達成できた安堵の気持ちが大きかった。その分何倍もの達成感を感じた。
「また一つ生きて行く糧を手に入れた。おれはまた一つ強くなった。」
※最後の数キロは時計の電池切れで計測不可