トレイル100マイルレース 第2回LAKE BIWA100に挑戦
今年3本目のトレイル100マイルレースLAKE BIWA100(169㎞、累積標高+10,500m)。滋賀県南部から西部の山岳エリア一帯(鈴鹿山脈⇒湖南アルプス⇒比叡山系⇒比良山系)を結ぶ国内屈指とされる山岳レースで100マイルレースでは累積標高+10,500mは最上位にある。
レースでは100マイル(165㎞)を越える大会があるのだが、100マイルを越えるレースとなると睡眠を取りながら進むステージレースとなり制限時間も長くなる。そのため不眠で進む100マイルレースとはまた少し求められるスキルが異なる。ただそこに行くステップであることには間違いない。今回この大会に挑戦するにあたりそこに進めるかの試金石になる。2年に1度開催し2024年4月に開催が予定されている滋賀一周ラウンドトレイル(438㎞、累積標高D+28,300m)に挑戦したいという気持ちを秘めてLAKE BIWA100に臨む。
不安はかなりある。今年は7月のみちのく津軽ジャーニーラン(266㎞)と、9月の佐渡島一周エコ・ジャーニーウルトラ遠足(208㎞)の準備のためロードでロング走は多くこなしていたが、山に行ったのは6月に出走した第1回DEEP JAPAN URUTLA100と、家の近くの低山に1度行ったきりだった。せめてもの救いはこの大会の2週間前に走った佐渡島一周の経験かと思う。このレースは荷物の預け場所が無く必要なものは全てスタートから背負いゴールまで走るというもので、今回の大会同様に背中のリュックが重かった。天候は雨の悪天候もあり35時間不眠で累積標高約2,000mある海岸線を走り続けた。予行練習として考えるならば最高の条件であったと言える。疲労の蓄積は否めないがプラス要素はそれを上回ると考えていた。
【コース図】
9時00分 スタート
スタート当日は早朝よりあいにくの強い雨で、夕方には止むとの予報ではあるが難航が予想される。ただ気持ちはワクワクしている。まだ見ぬ景色を見たいと心が躍る。選考審査で選ばれた285人中、262人がスタートをした。
スタートからすぐにレースで難関の鈴鹿峠に入る。この区間は約50㎞で上る累積標高は約5,000mとレース全体で上る標高の半分を占める。
鈴鹿峠は想像以上に険しかった。勾配がきつく岩肌も多い。そこに降りしきる雨でとにかく足場が滑る。上りは何とかなるのだか、下りが厳しい。とにかく踏ん張らなければ尻もちをつくほどで入れ替わりで前を行く選手は幾度も滑り何度も尻もちをつく。こんな光景は見たことが無い。自分もそうだがトレイルの大会で転んだり尻もちをつくことなどほとんど無い。
4㎏の荷物を背負い踏ん張りながら走って下るというのは想像以上に前太腿のブレーキ筋を使う。ロードを走る上ではブレーキをかけない走りに徹する。故に前太腿のブレーキ筋など必要が無く使いもしない。一番危惧していたことが、スタートから50㎞早々で起きてしまった。前太腿がひどい筋肉痛で踏ん張ることができない。前太腿どころかレースの最中に筋肉痛で苦しむことなど今まで一度もなかった。
「今までの人生の中で一番苦しい時間を過ごすことになる」 そう覚悟した。
一度山に入ると約20㎞ごとにあるチェックポイントまでは何があっても自力で辿り着かなければならない。救護などない。そんな不安に打ち勝つには自分を信じる強い気持ちしかない。
「リスクを避けるということはチャンスや成功をも避けるということだ。完走の先に拡がる世界を見てみたい」
大会としての制限時間は52時間ある。それでも自分の目標は最低でも35時間以内、総合50位内。そう強く思いながら90㎞を進んできた。だが残りは80㎞ある。全く先が見えない。
朝を迎えスタートから24時間が経過し、A6(SP125㎞)に到着する。ここからA7(SP149㎞)の比叡山系を越える24㎞区間が正念場だ。
景色が全く見えない山中でただひたすらに上り下りを7時間繰り返す。寝ていないせいか思考能力は薄れ同じ道を繰り返している錯覚にとらわれる。
19時 A7(SP149㎞)に到着
スタートから34時間。2度目の夜を迎える。ゴールまでは20㎞。1時間ほど休憩をし心身を整える。
「南比良の蓬莱山(ほうらいさん)1,174mの山頂に立ち、下ればゴールだ」 ゴールを確信する。
出発時刻が一緒になった5人でゴールまで共に向かうことになった。とても心強く心は晴れ晴れしている。
5人で向かうゴールまでの道はとても楽しい時間だった。言葉にはしないが苦難を乗り越えてきた者どうし称え合いながら最後のウイニングロードを進む。
南比良から望む夜景(琵琶湖)
山頂からゴールまで決して速くは無いが皆で最後まで走り続けた。
ゴール
午前1時53分、スタートから40時間53分。走行距離169㎞、累積標高+10,500m。
丸い月夜の深夜、静かにゴールした。
楽なことを望んでいると何でもないことが苦になるが、その逆に苦を知るほどに大抵のことは楽しく幸せに思えるようになるものだと思う。軽い背中を望むのではなく強い背中を望む人間でありたい。
自分自身を見つめ続けた貴重な時間でした。
皆様に感謝です。ありがとうございました。
【結果】
・169㎞、40時間53分13秒 総合56位/262人
【全体】
次戦
2022フードバレーとかちマラソン
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