第7回 大雪山トレイルジャーニー70km「Mt.TAISETSU Trail Journey」 北海道の山を駆け抜ける 〜後編〜
今年の大会はレベルが高く昨年のハセツネCUP覇者の三浦選手をはじめ、スカイエクストリーム世界ランキング5位の小川選手、国内の多くのレースで優勝している反中選手など上位陣は名の知れた有名選手が並び、一緒に同じコースを走れるというだけで胸が躍る。
スタート地点前の駐車場は当日の午前2時から開くため、指定された数キロ先の道の駅しらたきに車を停め仮眠をする。停車時は周りの迷惑を考えエンジンを止めるため寝苦しくてなかなか寝付けない。他の人は車用の網戸だったり、車の横にテントを張って寝ている。中にはスタート・ゴール地点の白滝高原キャンプ場を事前予約し、仲間や家族とバンガローやテントを張り泊っていてとても楽しそうだ。
朝の4時を回ったころから夜が明け始める。やはり山は暑くても快晴が何より気持ちがいい。いい一日になりそうだ。
【反中選手、仲間と記念撮影】
スタート5時の15分前よりゲート前に並び始める。
今回の目標は総合20位内。毎年コースが変わっているため過去のリザルトもあてにならないため、タイム予測はできなかったがおおよそ9時間台でゴールだろうか。A2ポイントの40㎞地点まで脚を使い切ってでも10位前後でしのぎ、中盤以降は長い急登が続くためパワーウオークしている間に脚の復活を願うという一か八かの厳しい作戦だ。2週間前に263kmの大会を終えた脚のダメージが大きく、大会数日前にようやく20㎞をゆっくりと走れる状態だった。70kmをペース配分して走るほどの脚ははじめから無い。午前中の気温が上がり切るまでに比較的アップダウンの少ない中盤まで飛ばし、逃げ切りを図りたい。何よりも心から楽しみ、感謝しながら走ろうと心に誓う。
【高低差図】
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スタートの合図
スタート直後から数十人が飛び出して行く。集団は想定以上に前半から速く戸惑ったが、時計を見ずに順位に拘り10位前後をキープして走る。
「とにかく雄大な景色を見ながら気持ち良く走ろう。」
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やはり高低差図を見ていただけでは思っていたイメージとまるで違う。考えていた以上にアップダウンが大きい。去年の秋から始めたトレイルは、経験が少ないことが幸いして怖いもの知らずで何とか乗り越えてきたが、何度もそううまくいくだろうか。気温も上がり30度に近づいて行く。
40km地点に到着した時には予定通りすべての脚を使い果たし、歩くことしかできなくなるのも時間の問題だった。
ここまで走っただけでも十分だと囁きかけてくる。あと少し時間が経てば脚が復活するかも知れないと、もう一人の自分は粘り続ける。残された少しの可能性を信じて数百メートル歩いては走ってを繰り返す。
30kmを過ぎた地点から何十人に抜かされただろうか。途中で数えるのを止め闘争心も消えかけていた。A3の53km地点に着きこれから以後はゆっくり景色を楽しみながらゴールをしよう、もう十分だと思いながらも諦めきれずにいた時、不意に係員が
「総合11位ですよ。前走者とは5分差。がんばれ!」と声をかけてくれる。
そこではじめて自分たちのスタートから3時間後に走り出している40㎞部門のコースと被っていたことを思い出す。急に力が湧いて来る。
「まだ15位内も夢ではない。あとたったの15kmちょっとだ。」
気持ちが180度反転する。
無我夢中で山を上る。40km付近で抜かれた同じザックの選手を捉え追い抜き際に「あの状態であそこから復活をしてきたなんて信じられない。」と驚かれ、更にいい気分になり力が湧き出てくる。
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標高1,771mのひらやまのピークは風速16m/Sの真っすぐ走ることがままならないくらいの突風だったが、30度越えの中で体内にこもった熱が抜け消耗した体力が徐々に回復してくるのを実感する。動きの速い雲の切れ間に見える景色は絶景で、ゆっくり見たいと思うほどに心も安ぎを取り戻してる。
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急な下りは極端に弱い。予想通りだったが、後半残り6㎞の下りで立て続けに抜かれる。上りでためた貯金はいつも下りで使い果たし、借金に変わる。残りあと数キロで1位から3位の女子選手3名に抜かれてしまった。とても追随できるスピードでは無い。悔しい...
残り3㎞となった時、遠くからゴール地点のアナウンスの声が聞こえてきた。あと少し。喜びが体中から湧き出てくる。
最後のロード2kmを振り絞って走り右折するとゴールが見えてきた。
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ビクトリーロードで待っていてくれた友人がハイタッチをしてくれた。とても嬉しい。喜びのあまり初めて何度も何度も両手を上げた。
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ゴール
いろいろな思いが詰まった忘れられない一日となった。
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【記録】
9時間46分40秒
総合 17位/262人
男子 14位
年代別 5位
《本大会の結果》
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最後に
人の温かさと自然の寛容さを感じ、大会を通じてまた一つ成長できたように感じます。
大会運営に携わった方々、応援頂いた多くの方々、いつもお力添えを頂く皆さま本当にありがとうございました。
次のトレイル参戦は夢のハセツネカップ 71.5K
次戦
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