みちのく津軽ジャーニーラン 最長266㎞の旅
自身を振り返るとマラソンを始めた2年後に初めてサロマ湖100㎞ウルトラマラソンに挑戦をし、翌年には山口100萩往還マラニック大会140㎞、みちのく津軽ジャニーラン188㎞と経験を重ね、その翌年にみちのく津軽ジャーニーラン263㎞と挑戦を続け、スパルタスロンへの出場という思いが次第に強くなっていった。
今回は2年の中止を経て開催の運びとなったみちのく津軽ジャーニーラン266㎞。出る度に教訓が与えられ、もっと強くなりたいと思わせてくれた大切な大会。全身で喜びを感じ、すべてに感謝をしながら精一杯走り切ろうと思う。
【大会要項】
大会名 : 第6回みちのく津軽ジャーニーラン
開催日 : 2022年7月16日(土)〜19日(月・祝)
主催 : NPO法人スポーツエイド・ジャパン
共催 : 弘前市
■競技部門 : 266.4km、累積標高+2,283m、-2,240m(ガーミン計測による)
制限時間 : 51時間
スタート : 7月16日(土)17:00 さくら野百貨店弘前店 正面入口前広場
ゴール : 7月18日(月)20:00 さくら野百貨店弘前店 正面入口前広場
制限時間 : 51時間
コース : 弘前市「さくら野百貨店」〜弘前公園東門〜弘前公園追手門〜岩木橋〜嶽温泉〜鯵ヶ沢港〜亀ヶ岡遺跡〜鰊
御殿〜津軽の像記念館〜龍飛崎〜今別役場前〜国道 280 号〜道の駅たいらだて〜県道 12 号〜おぐにふる
さと体験館〜中泊町津軽中里駅〜金木「斜陽館」〜五所川原市街地〜国道 339 号線(鶴田町〜板柳町〜藤崎
町)〜黒石市街地〜田舎館村〜弘前市里「さくら野百貨店」
【コースマップ】
スタート前
川の道フットレース513㎞、沖縄サバイルラン377㎞などの上位入賞者の面々が並ぶ。事前の計画表通りマイペースで進み、最大目標35時間以内、最低でも36時間以内のゴールを目指すことに集中すると自分自身に言い聞かせる。
17時00分 158人が一斉スタート
はじめの数キロは先導するガイドランナーがペースを定めその後に続く。その後、チェックポイント(CP1)22.4㎞地点の嶽温泉までは標高400mの上りが続く。スタートから徐々に気温が下がり走りやすい環境になって行くが慌ててはならない。先はとにかく長い。6分30秒/㎞位を目安に走行しチェックポイント(CP4)95.5㎞地点のレストポイント(R1)のニシン御殿を目指す。スタートから10時間25分後の午前3時25分前後を到着目安としている。
22.4㎞地点からは5名程度の集団で進んでいたが50㎞越えた辺りからはUさん、Iさんの3人となり、時折過去の大会の経験談などを談笑しながら進む。
午前3時37分(スタートから10時間37分) (CP4)95.5㎞地点のニシン御殿に到着
この95.5㎞地点のニシン御殿と、181.7㎞地点のふるさと体育館の2か所は、しっかりとした食事が用意され休憩もできスタート前に預けた自分の荷物が届けられるステーションとなっている。着替えと食事を済ませ、追加の食料などをリュックに詰め込み25分滞在しここを後にする。
3年前に初めて走った時には、この先SP125㎞地点の竜飛岬にさえ行けばレースの大きな山場を越えるものだと思い夢中で走ったが、地図上では見えてこなかったアップダウンの連続に苦戦しペースを急激に落としてしまった。その経験から自重しながら先に進む。トップから差が広がり背中も見えなくなったが180㎞を越えてからが自らとの勝負と心に決め、先を追わずマイペースを貫く。峠は猛烈な暴風雨で眠気も一気に覚める。あまりの悪天候に峠上に予定していた(CP6)117.6㎞地点の眺台ポイントが数キロ手前に設営されている。それでもトレイルで幾度も厳しい体験をしているだけあって精神的なダメージは全く無い。何れ嵐は止む。困難が大きいほど脳裏に鮮明に焼き付き、大切なよき思い出となることを知っている。
SP50㎞からはIさんとは歩調が合いずっと並走を続けている。聞くと生まれも同じ年。会話も楽しくジャーニーランというに相応しい楽しい旅となっている。
午前7時52分(スタートから14時間52分) (CP7)125.5㎞地点の龍飛コミュニ―ティセンターに到着
15分くらいの休憩のち再びトップを走っていたUさんに追いつきIさんの3人で並走する。
竜飛岬を下りた後も午前中は霧雨が降り続いた。酷暑を覚悟していただけに恵みの雨が心と身体を潤す。(CP11)181.7㎞地点レストポイントのふるさと体育館を目指す(最後の大休憩場所)。ここまで来るとただそこでの美味しい食事と30分の休憩を楽しみに足を前に運ばせている。
(CP8)137.9㎞地点 三厩体育館
ただここまで予定通り1㎞当たり6分30秒を基本ベースに走り続けてきたが、160㎞辺りから左足の脛に痛みがでてきた。幾度か同じ場所を怪我をしているだけにこの先どのような経緯を辿るかはおおよそ理解している。
「まだゴールまで100㎞以上ある。このペースで走り続けたなら間違いなく200㎞前後で走れなくなる。何れの選択を取ってもトップでのゴールはもはや不可能だと冷静に判断はできている。まずは(CP11)181.7㎞地点のレストポイントで考えよう。」
スタートから心掛けてきたのだが足裏の感触を確かめながら、偏った着地面とならぬよう、路面から受ける衝撃をできる限り与えぬようより一層丁寧に着地をすることを心掛ける。
午後14時04分(スタートから22時間04分) (CP11)181.7㎞地点レストポイントのふるさと体育館に到着
楽しみにしていた食事。ここではシチューとライスを2杯ずつ頼み、サラダを食べる。至福のひととき。食事をしながらUさんと今後について話をする。
Uさんも厳しい状況。お互いの一致する点は、1位でゴールするといまたと無いチャンスを捨てたくない。諦めなたくないという強い思い。この数年間積み重ねた努力が、少ない可能性ながらもしかしたら乗り越えられるんじゃないかという自分を信じる気持ち。ここはもうライバルとしてではなく一心同体として二人で進むことを決意する。
「自分はUさんがこの後どのような状態になっても共に最後まで並走する。お互いに引っ張り合いながら頑張ろう」と伝える。
30分程度で後続選手が入ってきたのを見てすぐにここを後にすることにした。
残りは80㎞。正直ここからがレースの本番と言ってもいい。気力、体力、睡魔との戦い。ここまでは厳しい時間帯が訪れても我慢をしていれば復活の時間が訪れている。かれこれ3回は復活しただろうか。でもこの距離になると復活はもう期待できない。
2人で走るとお互いに迷惑はかけられないと奮闘する。相方のがんばる姿が背中を押してくれる。決して良いことばかりではない。それでも苦しさが半減し喜びが2倍になる。
相方は何度かもう厳しい先に行ってくださいと伝えてきたが、目指すポイントを5㎞前後に小さく設定し休憩を多めに取ることを繰り返すことで凌いぎ繋いできた。「順位はどうであれ最後まで悔いの無い走りをし2人で一緒にゴールしよう。」
200㎞以上も先頭で走っているともう厳しい時間帯しか無いのだが、それでも少し厳しさが和らぐ時間帯と、極度に厳しい時間帯が交互に訪れる。走っているときは常に冷静に自分を分析する。決して一時の感情にとらわれてはいけない。あらゆる手段を使って走ることをやめさせようと防衛本能が働く。意外にに人のリミッターにはかなり余裕がある。そう考えていると痛い脚は本当に痛いのか?と思ったりする(笑)
左足の脛は足首から上30㎝くらいまで1.5倍以上に赤く腫れあがり、熱を帯びている。接地をする度に痛いことを意識をしていないと無意識に「痛い!」と大声が出てしまう痛さだ。それでも走り続ける。どうせ痛いのだからどこまで痛くなっても骨が折れさえしなければ、腱が切れさえしなければ同じだと思い走っている。
午前3時37分(スタートから10時間37分) (CP14)245.6㎞地点のスポーツプラザ藤崎に到着
ここがGPSチェックの最終ポイントだ。ポイントに先に到着した相方が待っている。
「最後だけは先にチェックしてください。これまでのお礼の気持ちです。」
その気持ちが本当に嬉しかった。相方はここまですべて1位でチェックしそれを守り続けてきた。それが何を意味するのか自分にはよく解る。相方と共にここまでこれたことに感謝した。
ラスト20㎞。
「もう一位はほぼ確実だが最後まで気を抜かずがんばろう。」互いに勇気を与え続けた。
ゴール
午前6時51分(スタートから35時間51分) に二人揃って念願の一位でゴールを果たした。
【結果】
・35時間51分01秒 1位
エントリー者数:170名
出走者数:158名
完走者数:85名
完走率:53.8%(前回62.5%)
【ゴール地点にあるつけ麺屋】
次戦
佐渡島一周エコ・ジャーニーウルトラ遠足208㎞