マスターズ陸上「M50」 800/1,500/3,000m トラック競技に初挑戦
陸上の花形競技である陸上トラック競技が好きで、テレビ中継で世界陸上やオリンピックなどを観戦していたが直接観戦したことは無かった。無論、興味はあったが自分がトラックで走るというのは考えたことが無かった。
今までマラソンの練習に於いて脛、膝、股関節など様々な怪我に見舞われてきたが、いつも怪我のとどめを刺すのがスピード練習で起きていて怖かったというのがある。でもそれ以上に多くの人が見守る中、フォームもままならない最後尾でゴールする自分の姿を想像すると恥ずかしいという気持ちが全てを上回っていたと思う。
「知っている」と「やればできる」、「実際にやった」では全く別物でそこには大きな隔たりがある。「やってみたい」という気持ちを大切に恥を忍んで挑戦する決意をした。
◎出場するには
マスターズ陸上に出場するには、日本マスターズ陸上競技連合(日本マスターズ)への会員登録が必要で、満18歳以上であれば、陸上競技の経験の有無に関係なく登録(学連登録者、高校生をのぞく)でき、居住する都道府県のマスターズ陸上競技連盟(都道府県マスターズ)に登録することにより、日本マスターズの会員となり、すべての都道府県のマスターズの大会に出場することができるとなっている。
◎競技年齢区分
競技は5才刻みで競う。※例)「M45」とは満45〜49才、「M50」とは満50〜54才
◎大会での出場制限
1人の出場種目が大会により2種目以内とか3種目以内と決まっている。
◎シューズの規定
靴底の厚さについてトラック種目は800m未満については20mm、800m以上は25mm迄 ※2024.11.1から一律20mmに競技規則変更
マラソンや競歩などのロード種目の場合は、ソールの厚さ40mm以下のランニングシューズの使用が認められていることを考えると全然違う。そこから!(笑)
それとトラック種目は先の尖った鉄ピン付のスパイクシューズでなければならないと思っていたため、自分には脚への負担が大きく怪我の懸念があった。
調べてみると、尖った鉄ピンは土(アンツーカー)用で初心者で長さ12mmとなっているが、全天候舗装路(オールウェザー)用には先が平らで長さが7mm、5mmなど短いということがわかり思い違いをしていた。それどころかピン無しの専用シューズもありレースでの使用が認められている。
靴底の厚さ20mmを購入するとトラック競技を全て走れると思いながらも、地面から衝撃を受けての怪我を避けるためにまずは25mmでピン無しを購入することにした。これにより出られる種目は800m以上となるが仕方がない。
早速、北海道マスターズ陸上競技連盟に加盟し、シューズ(アシックス METASPEED LD)を購入する。
◎エントリー
北海道内のマスターズ陸上大会は6月から10月までに5つ予定されている。ただすでに自分が出る大会と日程が重なっているのが大半のため以下とした。
7月2日(日) 第30回小樽後志マスターズ陸上競技大会 (出場種目 : 「M50」800m、1,500m、3,000m)
◎練習
次に練習を考える。地元には土の陸上競技場しか無いため、隣の小樽市にある手宮公園競技場で行うことにした。利用シーズン券(4月1日〜10月31日迄)を4,000円で購入する。
5月27〜28日に第2回弘前24時間走選手権 (第2回弘前24時間走選手権 250㎞超えへの挑戦)と、6月25日 第38回サロマ湖100㎞ウルトラマラソン(100㎞)( 第38回サロマ湖100㎞ウルトラマラソン 7時間30分切りの挑戦)が控えている。
第2回弘前24時間走選手権の前に1回と、第38回サロマ湖100㎞ウルトラマラソンの後に1回行うこととした。2回あれば何となくイメージは湧くだろう。
初回の練習で初めてトラック用のシューズを履き、想像以上に速く走れ喜びの余り爆走した結果、太腿付け根外側の靭帯を損傷しスピードを出して走れない状態となる。整骨院でハイボルトと針治療。1週間後に控えた最重要レースである24時間走選手権の前とあり落ち込み、後悔をした。
24時間走選手権では怪我を更に悪化させたため、1カ月間練習強度を弱めた調整をしサロマ湖100㎞ウルトラマラソンに臨んだ。その4日後に2度目となる手宮公園競技場で状態を確認。
そんなこんなを乗り越え、7月2日(日) 第30回小樽後志マスターズ陸上競技大会 当日を迎えた。
1週間前に100㎞ウルトラマラソンを走っており、脚の疲労が抜けておらず60%くらいの状態だがそうなるのはわかっていたことだ。出場しなければ報われない。幸いにも怪我の痛みもほとんど無い。
【競技日程】
【会場の様子】
●1戦目 9時45分 1,500m「M50」
思っていたスタート位置と違い、慌てて6分前にスタート位置に着いたら今度は選手の先輩方から「ゼッケン違うよ」と言われゼッケン配布先を教えてもらい本部に猛ダッシュ。周回を重ねる競技は審判員に解りやすいように少ない数字の黄色のゼッケンを前後に付けることになっているらしい。スタート1分前に戻りギリギリセーフ。審判に「申し訳ないけどスタート時刻が決まっているので時間通りのスタートになります」と告げられる。
「たかだか4周弱だ」と自分に言い聞かせる。
スタートの号砲!
冷静さを失い。とにかく走る。
会場から「先頭、櫻庭選手 1周400m通過タイム 70秒」アナウンスされる。
心の中で「いやいや日本記録のペースだろ」と苦笑。とにかく最後まで走り切るよう懸命に堪えるしかない。周回の度にみるみる間に失速している。
1周ごとの通過タイム、1㎞通過タイムなど的確に会場全体にアナウンスされる。まるで選手になったかのようだ(笑)
最終の鐘が鳴らされる。脚が上がらないが懸命に走りゴールする。
「1着、櫻庭選手 大会新!」のアナウンス
「まさか、こんなことがあるのか」
全く大会記録や自分の予測タイムなど考えていなかった。喜びが込み上げてくる。
●2戦目 13時30分 3,000m「M50」
1度経験したので同じ轍は踏まない。入りのペースを調整する。「トラック7.5周もある。一定ペースで走れるよう中盤まで温存だ。次も大会新を出す」
スタートの号砲!
とにかく冷静に自重しながら走る。
「先頭、櫻庭選手 1周400m通過タイム 80秒」
「狙ったタイムだ。このまま同じペースで走り抜きたい」
4、5、6周目
「1,500mで大会新の先頭、櫻庭選手 1周400m通過タイム 85秒 ペースは変りません」
最終の鐘が鳴らされる。思うように脚が動かないが懸命に走りゴールする。
「1着、櫻庭選手 大会新!」のアナウンス
「疲労のためか目標としたタイムよりも遅いが素直に喜ぼう」
●3戦目 14時05分 800m「M50」
3,000mを終え20分後のスタート。しかも800m。全く走れる気がしない。もう脚が動かない。直前までDNSを考えたが折角来たのだからあと2周と思い直し、スタートラインに立つことにする。
「隣のレーンには2022年度の大会記録集計表で目にした有力選手の湯浅選手がいる。勝ちたい」
スタートの号砲!
スタートを出遅れ200m地点までは最後尾。湯浅選手とは20〜30mの差がついている。
「2周目最終コーナーからゴールまでの直線150mで勝負する」
最終コーナーを出た時点で並んだ。ここから加速する。身体半分は交わしただろうか。無我夢中で走る。
アナウンスが熱を帯びているが何を言っているかは耳に入らない。鼓動が跳ね上がり意識が飛びそうだ。
ゴール!
「1着、櫻庭選手」のアナウンス
最高にエキサイティングで楽しい初挑戦を終えた。また少しだけ成長できた気がする。
ゼッケンの種類、スタート位置やセパレートレーンの走り方など何もわからず終始バタバタで、何から何まで選手の先輩方に優しく教えて頂き心から感謝です。
たくさんの応援と運営の方々、素晴らしい1日をありがとうございました。
【結果】
- 800m 2分29秒11
- 1500m 4分57秒86 (大会新)
- 3000m 10分28秒84 (大会新)
次戦
スパルタスロンレース(アテネ〜スパルタ 246㎞)
⇒初挑戦 2023年スパルタスロンレース(アテネ〜スパルタ 246㎞) 〜前編〜
⇒初挑戦 2023年スパルタスロンレース(アテネ〜スパルタ 246㎞) 〜後編〜