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ウルトラマラソンの極地 バットウォーター135へ初めての挑戦

2025年7月18日
ウルトラマラソンの極地 バットウォーター135へ初めての挑戦

10年前、走り始めた頃に出合った本がある。そこにウルトラマラソンのノンストップレースで世界で最も過酷なレースとして「バットウォーター135」について書かれていた。「いつの日か自分もこの大会にに挑みたい」と思いを馳せてきた。そしてついにそれが現実となる。


〔大会概要〕

BADWATER135(バッドウォーター135)
・135マイル/217㎞、累積標高+4,450m、-1,859m、制限時間48時間
・2025年7月7日 21:00start(日本時間 7月8日13:00)
・アメリカ カリフォルニア州 デスバレー(海抜85m)〜ホイットニー山(標高2,548m)
※スタート地点のデスバレー(死の谷)は世界最高気温56.7度の記録地


〔大会詳細〕

今年で48回目を迎えるこの世界的に有名なイベントは、世界屈指のタフネスを誇る100人のアスリートたちが、他に類を見ない過酷な環境で、互いに、そして自然と対峙します。灼熱の海面下から標高8,360フィート(2,548メートル)の高地まで、24カ国とアメリカの25州を代表する100人の持久力アスリートたちが、デスバレーからカリフォルニア州ホイットニー山まで、過酷な135マイル(217km)のノンストップランニングレースで競い合います。 「世界で最も過酷なマラソンレース」として広く知られる招待制のバッドウォーター135は、地球上で最も過酷でエクストリームなランニングレースです。

スタートラインはデスバレー国立公園のバッドウォーター盆地で、ここは海抜マイナス282フィート(85メートル)で北米で最も低い標高を誇ります。レースは標高8,360フィート(2,530メートル)のホイットニー・ポータルでゴールします。コースは3つの山脈を横断し、累積標高差は14,600フィート(4,450メートル)、累積標高差は6,100フィート(1,859メートル)です。ホイットニー・ポータルは、アメリカ合衆国本土の最高峰であるホイットニー山の山頂への登山口です。参加者は、マッシュルームロック、ファーネスクリーク、ソルトクリーク、デビルズコーンフィールド、デビルズゴルフコース、ストーブパイプウェルズ、パナミントスプリングス、ダーウィン、キーラー、アラバマヒルズ、ローンパインといった地名を持つ場所を巡ります。バッドウォーター135は、デスバレー国立公園、カリフォルニア州運輸局、インヨー国有林、そしてインヨー郡の許可を得て、緊密に連携して開催されます。


〔位置図〕


〔標高図〕



【トレーニング】

自分にとって想像のつかない未知のレースに臨むにあたり、以下のトレーニングを行ってきた。初めての試みである暑熱化対策。始めはサウナで行うつもりだったが、日々時間の確保が難しいため、効率のよいトレーニング方法として自分なりに考え実行した。人体実験の結果としてどのような成果を得られるか、毎度新たな試みをする。短期的には効果が無いのかも知れないし、はたまた非効率なことなのかも知れない。ただそこには実行した者にしか解らない成功へ繋がる鍵が隠されているのではないかと毎度の楽しみである。
「努力の山は登って無駄に終わるということはない」

〔RUN〕

・4月 1,050㎞、29run、累積標高+9,480m
・5月 803㎞、24run、累積標高+4,080m
・6月 748㎞、28run、累積標高+7,790m



〔暑熱化対策〕

<日付/トレミ速度/運動時間/酸素濃度標高設定/室温設定/サウナスーツ有無>
・6/ 9(月) 7.8㎞/h、40分、標高5,000m、室温25度、着用 ▪終了直後測定 血中酸素濃度/脈拍 85/120
・6/11(水) 8.5㎞/h、40分、標高5,000m、室温30度、着用 ▪終了直後測定 血中酸素濃度/脈拍 88/153
・6/13(金) 8.5㎞/h、40分、標高5,000m、室温30度、着用 ▪終了直後測定 血中酸素濃度/脈拍 84/167
・6/16(月) 8.5㎞/h、30分、標高5,000m、室温30度、着用
・6/18(水) 8.5㎞/h、30分、標高5,000m、室温30度、着用
・6/19(木) 8.5㎞/h、40分、標高5,000m、室温30度、着用 ▪終了直後測定 血中酸素濃度/脈拍 87/162
・6/21(土) 8.5㎞/h、40分、標高5,000m、室温30度、着用 ▪終了直後測定 血中酸素濃度/脈拍 88/161
・6/23(月) 7.0㎞/h、40分、標高4,500m、室温40度、着用 ▪終了直後測定 血中酸素濃度/脈拍 84/162
・6/25(水) 7.0㎞/h、40分、標高4,500m、室温40度、着用
・6/27(金) 7.0㎞/h、30分、標高4,500m、室温40度、着用
・6/28(土) 7.0㎞/h、30分、標高4,500m、室温40度、着用 ▪終了直後測定 血中酸素濃度/脈拍 85/164
・6/29(日) 7.0㎞/h、30分、標高4,500m、室温40度、着用
・7/ 1(火) 7.0㎞/h、30分、無し、室温40度、着用
・7/ 2(水) 7.0㎞/h、30分、無し、室温40度、着用



【レース前日 Badwater(レーススタート地点)】



【レース前日受付 Lone Pine(レース200㎞地点)】



【レース当日朝 Lone Pine(レース200㎞地点)】
〔ゴールの山 ホイットニー山を望む〕



【スタート4時間前 Death Valley】



レース前日、サポートクルーとの連携を確認するために5㎞ほど走る。
走り始めてすぐに目はドライアイとなり視界がかすみ、鼻の粘膜が乾き鼻血が滲む。だがそれさえも直ぐに乾いてしまう。そのため口で呼吸をするのだが喉の湿潤を失うのが早く、風邪をひいたかのように喉が痛い。


この地は世界最高気温56.7度を記録した極地。自分の想像を遥かに越えている。

スタート4時間前の17時の気温が48度。太陽とマグマは地表との距離が半分と思うほどに日差しが強く、地表が熱い。これに風が付くと熱波となる。


21時スタート ※グループ(1) 20:00、(2) 21:00、(3) 22:00 スタート

目標は25時間以内、3位内。コースさえも知らぬ初参加でこの計画は一歩間違うと完走さえ危ぶまれるが心は決まっている。

本当にほしいものを手に入れるためにはリスクを恐れてはならない。ほぼ失敗しない程度の計画には何の意味も持たない。ギリギリの挑戦は達成すれば成功体験として更なる飛躍を臨める。失敗しても経験という財産が残る。だが中途半端は後悔だけが残る。

「迷ったら後悔しない方を選ぶ」「ベストを尽くしたことを後悔する人はいない」いつもそう思い人生を歩んできた。


大きな峠に入る75㎞地点迄を5時40分の日の出前に到達しなければ目標の達成は無い。平均5分/㎞を目安に進む。


スタート時の40度から夜間は35度前後。暑さに体力を奪われながら計画よりも速いタイムでこの地点に達した。

ここから先は下りの無いおよそ平均20㎞で標高1000mを上る3つの山越えがある。

日の出とともに一気に気温は上昇し、容赦なく日差しが照り付ける。標高が上がれば気温が下がり、走りやすくなるだろうとの考えは甘かった。
上るごとに暑くなる。まるで太陽に近づいているかのように。


決死の思いで1つの峠の頂上に辿り付き、休む間もなく標高600mを一気に下る。


117㎞地点。気温は上昇を続け身体がオーバーヒートして悲鳴をあげる。身体は全てを拒絶し水さえも受け付けない。座っていても身体を静止できず目の前が暗くなる。

およそ40分の大休憩を余儀なくされ、自問自答を繰り返した結果、目標を「完走」に切り換える。チームとして臨む以上、ゴールを託されたものとして最低限の成果を持ち帰らなくてはならない。

ただただ寄り沿い力を与えてくれようとする仲間の気持ちに全力で応えたいそう思う。
「やれるか やれないかではない。やるか やらないか」ただそれだけだ。

メンバーの一言でここからはクルーの車が1.5㎞(約10分毎)で先で待ち構え、1人が噴霧器で氷水を全身に掛け、その先に待つ一人が氷水のボトル600mLを手渡すという作戦に切り換える。

1㎞もしないうちにずぶ濡れに浸された全身は乾き、体感温度が急上昇する。


そんな中、500m先に既に道路脇に立ち待ち構えているメンバーの姿がかすかに見える。
数か所の停車禁止区間(3㎞など)はメンバーがペットボトル数本を持ち、後方から水をかけながら並走をしてくれた。


「必ずみんなをゴールに連れて行くから」強く心に誓う。

スタートから20時間、175㎞地点。17時の気温は41度。横風が強い。風上にはすぐ近くに溶岩があると思えるほどの熱波が襲う。

未だに水さえも喉を通らず、水を口に含んでは吐き出すほか無かったが懸命のサポートが一体感を生み、気持がゴールへ向かう。


最後の町Lone Pine(レース200㎞地点)に到着しCheckを済ます。
残り17㎞、ホイットニー山(登山口 標高2,548m)のゴール地点まで標高1,300m上がればゴールだ。


最後の9㎞はメンバーに代る代る並歩を求め、凝縮したこれまでの時間を回想し噛みしめながら上った。

▪結果 27時間54分22秒 10位

「自身を苦しめた高い壁を乗り越えたとき、その壁は自身を守る砦となり宝となる」


[チーム53]
・岩本 能史
・林原 誠
・岩本 里奈
・穴澤 梨緒
・櫻庭 健  ※敬称略



  • 距離 : 217㎞
  • 累積標高 +5,476m、-2,903m ※Garmin実計測に依る

  • 走行ペース



  • 【レース後】

    ゴールしたのが深夜1:00だったため一度ホテルに戻り睡眠を取り、日本チームの応援に車で向かった。
    まだレースは続いており、感動的なゴールを目撃した。

    〔ゴール地点 ホイットニー山(登山口 標高2,548m)〕
    ※標高は4,421m、アメリカ合衆国本土で最も高い山



    〔表彰式、ピザパーティー〕
    写真自分の右隣 : Jimmie Strahorn(アメリカ) 9位、写真左隣 : David Bone(イギリス) 11位
    両者と喜びを分かち合い固い握手と記念撮影をした。