フェラーリF355純正18インチマグネシウムホイールのフルオーバーホール
マグネシウムは極端に耐食性の悪い金属ですので、古い物は腐食が激しく出ている事が多いですが、今回のホイールはかれこれ25年程前のマグネシウムホイールにも関わらず、特に目立つような腐食跡も見られずに、古いマグネシウムホイールとしてはかなり良い状態と思います。
それでも25年前のホイールですので、全体的に塗装の劣化や退色は見られますので、再塗装で綺麗にフルオーバーホールご希望で東京都よりご依頼いただきました。
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まずは塗装の剥離から下地処理を行います。
アルミホイールの場合は、剥離液槽へ漬け込みしますが、マグネシウムを剥離液に漬けこむと一気に浸食が始まりますので、マグネシウムの剥離は専門工場へ外注して剥離します。
剥離から戻ってきてから、ブラスト研磨や回転研磨で塗装の下地を整えます。
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アルミホイールの場合はここからパウダーコート塗装に入りますが、マグネシウムの場合は塗装前に化成処理と言う酸化被膜処理を行います。
マグネシウムの酸化被膜処理としては、陽極酸化と化成処理の2通りありましたが、今は化成処理1つで統一にしております。
化成処理液を吹き付けて数分放置、数分後にエアーブローで水分を飛ばし、さらに沸き防止のために、200℃程度で数十分下焼きを行います。
沸きに関しては「パウダーコート塗装の沸きとは?」にて参照下さい。
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次にパウダーコート塗装に入ります。
1コート目に、マグネシウム専用のプライマー兼シルバーをパウダーコートします。
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焼付けてシルバープライマーを硬化させ、2コート目にクリアーをオーバーコートします。
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普通のシルバー仕上げとしてはこれで完成となりますが、このフェラーリF355のマグネシウムホイールは、かなり明るい特徴のあるシルバーなので、パウダーコートをサフェーサー代わりにし、表面はウレタン塗料で調色したシルバーをウレタン塗装でお化粧します。
表面デザイン面を足付け研磨をし、表面ウレタン塗装時に側面やインナーにミスとが付かないように、側面とインナーをマスキングします。
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調色したウレタンシルバー塗装後に、ウレタンクリアーを塗装します。
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ナットホールのアルミブッシュも綺麗にします。
マグネシウムのホイールの場合は、素地そのままだと強度的に弱いのと、ハブボルトの腐食がホイールに移ると一気に腐食してくるため、ほとんどのマグネシウムホイールはアルミのブッシュが圧入されています。
今回のホイールも同様で、このアルミブッシュも綺麗にします。
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アルミブッシュを圧入し、全て完成となります。
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マグネシウムホイールに対して直に溶剤塗装(ウレタン塗装)をされた物が良く入庫しますが、マグネシウム素材に対して直に溶剤塗装は、マグネシウムを腐食させますので厳禁です。
今回は仕上げは溶剤塗装ですが、ベースとしてパウダーコートでガードした上に溶剤塗装ですので、マグネシウム素地は丈夫なパウダーコート膜で守られます。
マグネシウムホイールの仕上がりの良し悪しは、元々の状態に依存されます。
元々の状態がすでに腐食侵食されているような物は完全に綺麗にはならない事もあります。